制御盤や電気制御に関わる現場でよく耳にする「端子台(たんしだい)」。
聞いたことはあるけど、何をするものなのか、なぜ必要なのか、初心者の方にとっては少し分かりにくい存在かもしれません。
この記事では、「端子台とは何か?」をやさしく解説していきます。
1. 端子台とは?ひとことで言うと「電線をつなぐ部品」
端子台とは、電線同士を接続するための部品です。
制御盤や配電盤の中で、配線の中継や分岐、接続の整理を目的に使われます。
例えば、センサとPLCを直接つなぐのではなく、間に端子台を挟んで接続することで、配線の作業性や保守性が格段に向上します。
端子台はターミナルブロックとも呼ばれ、工場やビル、各種装置の制御盤に必ずと言っていいほど使われています。
2. なぜ端子台が必要なの?3つの理由
理由①:配線を整理できる
制御盤の中には、数十〜数百本の電線が行き交います。
それらを全て直接つなぐと、配線が絡まったり、どれがどこにつながっているのか分からなくなります。
端子台を使えば、配線をブロックごとに整理できるため、見た目もスッキリし、点検や修理がしやすくなります。
理由②:メンテナンスがしやすい
機械や装置のトラブル時、電線の接続を確認・交換する必要があることも多いです。
端子台を使っていれば、ドライバー1本で簡単に電線を外したり接続したりできるため、作業時間の短縮になります。
また、端子台には「どこから来た線か」「どこへ行く線か」を示す番号やラベルが付けられるため、トラブル対応が迅速になります。
理由③:外部配線と内部配線の境界になる
端子台は、制御盤の「外」と「中」をつなぐ役割も果たします。
例えば、センサやモーターなど外部にある機器からの配線は、まず端子台に接続されます。そこから内部のPLCや電源装置へと接続されていくのです。
これにより、制御盤を分離して移設・交換する場合も、端子台で接続を切り離せば簡単に作業できます。
3. 端子台の種類
端子台にはいくつかの種類があります。代表的なものを紹介します。
● ネジ式端子台(スクリュー式)
最も一般的なタイプ。電線を差し込み、ドライバーでネジを締めて固定します。
しっかり固定できるのが特徴ですが、ゆるみや締め忘れに注意が必要です。
● バネ式端子台(スプリング式)
ばねの力で電線を固定するタイプ。工具なしでも着脱でき、近年よく使われるようになってきました。
ネジのゆるみがないため、振動の多い場所でも安定性があります。
● 圧着端子対応タイプ
電線の先に圧着端子(丸形端子など)を取り付けてから端子台に接続します。
配線が確実に固定されるので、特に振動の多い機械ではよく使われます。
4. 端子台を使う際の注意点
● 締め付けトルクに注意
ネジ式の場合、規定トルクで締めないと、接触不良や発熱の原因になります。
● 番号(マーキング)を必ず付ける
どの線がどこに接続されているか分からなくなるのを防ぐため、端子番号や配線ラベルをきちんと管理することが重要です。
● 電線の太さと端子台の対応を確認する
電線が太すぎたり細すぎたりすると、端子台に正しく接続できず、トラブルの元になります。
5. 近年注目される「プッシュイン端子」とは?
近年、制御盤や電気配線の現場で急速に採用が広がっているのが「プッシュイン端子」です。
これはバネ式の一種で、電線を「差し込むだけ」で接続できる新しいタイプの端子台です。
● 工具不要で配線できる
プッシュイン端子は、その名の通り電線を押し込む(プッシュする)だけで接続が完了します。
ドライバーも不要なため、作業時間が大幅に短縮されます。
特に大量の配線作業が必要な制御盤の組立現場では、そのスピードと効率の良さが高く評価されています。
● 安定した接触と耐振動性
内部に高性能なスプリング構造が使われており、強固で安定した接触を実現しています。
また、ネジのゆるみがないため、振動や衝撃にも強く、長期間安定した接続が維持できるのが大きなメリットです。
● 圧着端子が不要になるケースも
プッシュイン端子は、電線の先端を「フェルール(棒状圧着スリーブ)」で整えて挿入するのが一般的です。
これにより、接触不良のリスクを減らしつつ、圧着端子を使わないシンプルな配線が可能になります。
● 作業者のスキルに依存しにくい
ネジ締め式では、どうしても作業者の締め具合にばらつきが出てしまいます。
その点、プッシュイン端子は誰がやっても一定の品質が保てるため、熟練者でなくても安心して使えるのが特長です。
7. 今後の主流になる可能性も?
欧州ではすでに多くの現場でプッシュイン端子が標準採用されており、日本でも大手メーカーが対応製品を次々と展開しています。
とはいえ、既存設備との互換性や作業習慣の違いもあるため、すべてが一気に置き換わるわけではありません。
しかし「省力化」「品質安定」「工数削減」といったメリットから、今後ますます広がっていくと予想されます。
5. まとめ
「端子台って何のためにあるの?」という問いに対して、まとめると以下の通りです:
- 電線同士を接続・中継するための部品
- 配線を整理し、保守性や作業性を向上させる
- 制御盤の「外」と「中」をつなぐ重要な役割を持つ
- ネジ式・バネ式など種類があり、用途によって使い分ける
制御機器において、端子台は縁の下の力持ちのような存在です。
見た目は地味でも、効率的で安全な制御盤を作るうえで欠かせない重要なパーツと言えるでしょう。
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