温度調節器のオンオフ制御とPID制御とは?

FA機器

~仕組み・違い・使い分けをやさしく解説~


目次

  1. はじめに:温度調節器とは
    2-1. オンオフ制御とは
    2-2. PID制御とは
  2. それぞれの使い分け、メリット・デメリット
  3. アプリケーション事例紹介
  4. 主なメーカー
  5. まとめ

1. はじめに:温度調節器とは

温度調節器は、ヒーターや冷却装置を自動で制御し、設定した温度を一定に保つための制御機器です。
工場や研究設備、食品加工機械など、温度管理が重要なあらゆる場面で使用されています。

たとえば「タンク内の液体を60℃に保ちたい」という場合、温度調節器はセンサーで温度を検出し、その値が設定温度より低ければヒーターをON、高ければOFFといった制御を行います。
このように、人の手を介さずに自動で温度を安定させるのが温度調節器の役割です。


🔧 温度調節器を使うときの機器構成

温度制御システムは、一般的に次の3つの要素で構成されています。

構成要素主な役割具体例
① センサー(検出部)現在の温度を検出し、電気信号に変換する熱電対(K, Jタイプなど)、測温抵抗体(Pt100など)
② 温度調節器(コントローラ本体)センサーの信号と設定値を比較し、出力を制御するデジタル温度調節器、PLCなど
③ 加熱・冷却機器調節器の指令に応じて実際に加熱・冷却を行うヒーター、クーラー、冷却装置など
④リレー・SSR(必要に応じて)加熱・冷熱機器を高速でオンオフする場合や、温度調節機内蔵のリレーでは接点容量が足りない場合に使用される。

この3要素の流れを簡単に示すと以下のようになります。
[センサー] → 温度を検出
   ↓
[温度調節器] → 制御信号を出力(ON/OFFまたはアナログ)
   ↓
[アクチュエータ] → ヒーターをON/OFFして加熱
たとえば、タンク内に温度センサーを取り付け、その信号を温度調節器が受け取ります。
設定温度より低いと判断すれば、SSRを通してヒーターに電力を供給し、温度が上がるように制御します。
温度が目標値に達すれば出力を止め、安定した温度を保つよう調整します。


このように、温度調節器は単体ではなく、センサー+制御器+加熱機器が連携することで機能します。
制御の仕方には「オンオフ制御」と「PID制御」があり、どちらを採用するかによって温度の安定性や応答の速さが大きく変わります。

次章では、それぞれの制御方式の仕組みを詳しく見ていきましょう。

2-1. オンオフ制御とは

オンオフ制御は、最もシンプルな温度制御方式です。
設定温度を基準にして、「加熱(ON)」または「停止(OFF)」の2つの状態で制御を行います。

たとえば設定温度を100℃にした場合、温度が99℃以下だとヒーターがONになり、100℃を超えるとOFFになります。
このように、温度が設定値の前後で上下に振れるため、グラフにすると波のような動きをします。
この温度の上下を「ハンチング」と呼びますが、許容範囲が大きい装置では問題になりません。
一方で、一定温度を厳密に保ちたい場合には、制御が荒く感じられることがあります。

特徴まとめ

  • メリット:構造が簡単、コストが低い、設定が容易
  • デメリット:温度が安定しにくい、精密制御には不向き

2-2. PID制御とは

PID制御は、より精密な温度制御を行うための方式です。
「比例(P)」「積分(I)」「微分(D)」という3つの要素を組み合わせ、ヒーター出力を連続的に調整します。

要素働き例え
P(比例)現在の温度のズレに応じて出力を変える今のズレに反応して調整する
I(積分)ズレが長く続くほど出力を補正するズレを長期的に修正する
D(微分)温度変化の速さを見て先回り制御する過剰に上がりそうならブレーキをかける

これにより、設定温度にすばやく、かつオーバーシュート(行き過ぎ)を少なく到達することが可能です。
PID制御を用いることで、ハンチングが減り、安定した温度維持が実現します。

ただし、PID制御はパラメータ(P値・I値・D値)の調整が必要です。
装置の応答性や環境条件によって最適値が異なるため、慣れるまでは少し難しく感じるかもしれません。
最近の温度調節器では、オンオフ制御とPID制御を自動で切り替える「オートチューニング機能」も搭載されており、初心者でも扱いやすくなっています。

特徴まとめ

  • メリット:温度が安定、精密な制御が可能
  • デメリット:設定が難しい、価格がやや高い

3. それぞれの使い分け、メリット・デメリット

項目オンオフ制御PID制御
制御方式ON/OFFの2値制御出力を連続的に調整
温度の安定性△(ハンチングあり)◎(滑らかに制御)
コスト安価やや高価
設定の容易さ簡単難しい(チューニング必要)
用途例トースター、温水器成形機、乾燥炉、恒温槽など

一般的には、

  • 簡易な装置・コスト重視 → オンオフ制御
  • 高精度・安定性重視 → PID制御
    という使い分けになります。

4. アプリケーション事例紹介

  • 樹脂成形機:樹脂の温度が数度変わるだけで品質に影響するため、PID制御で精密な温度管理。
  • 試験装置:安定した温度保持が求められるため、PID制御が標準。
  • ヒーター付きのタンク:お湯や油の温度制御には、簡易なオンオフ制御で十分な場合も。
  • 食品加工機械:PID制御により、焼きムラや温度ムラを防止。

このように、制御の「精度」と「応答速度」が必要なほどPID制御が選ばれます。


5. 主なメーカー

日本国内で温度調節器を製造・販売している代表的なメーカーは以下の通りです。

  • オムロン(OMRON):工場設備向け温度調節器のトップシェア。
  • キーエンス(KEYENCE):高精度な温度制御と通信機能を両立。
  • チノー(CHINO):温度制御・記録分野の老舗メーカー。
  • アズビル(Azbil):ビル・工場向け制御システムに強み。
  • 横河電機(Yokogawa):プロセス制御や計測器で国内外に展開。

これらのメーカーの製品は、機能面だけでなく通信対応(Ethernet、RS-485など)や表示の見やすさも進化しています。


6. まとめ

温度調節器は、設定温度と現在温度の差を見ながら、ヒーター出力を制御して温度を一定に保つ装置です。
制御方式には「オンオフ制御」と「PID制御」があり、それぞれに特徴があります。

  • オンオフ制御:簡単・低コストだが温度の振れが大きい
  • PID制御:高精度で安定、ただし設定がやや難しい

用途や求める精度に応じて、最適な方式を選ぶことが重要です。
最近では、PID制御を自動調整できる機能付き製品も多く、初心者でも扱いやすくなっています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました