FA機器の通信を学び始めると、次のような言葉が出てきます。
- Ethernet/IP
- FINS
- MCプロトコル
- MODBUS/TCP
そして多くの人が混乱します。
Ethernetポートがあるなら、全部EtherNet/IP通信なのでは?
しかし、これは大きな誤解です。
本記事では、それぞれの違いと関係性を初心者向けに整理します。
1. まず大前提:役割が違う
最初に理解すべきことは、これらは「同じ種類の通信」ではないということです。
混乱の原因は、すべてが「Ethernet」という言葉と一緒に語られるからです。
2. Ethernetポートとは何か?
Ethernetポートとは、LANケーブルを挿すための差し込み口です。
それ以上でもそれ以下でもありません。
つまり、Ethernetポートがある=EtherNet/IPが使えるとは限りません。
これは非常に重要なポイントです。
3. Ethernetは「道路」
イメージすると理解しやすいです。
- Ethernet → 道路
- 通信プロトコル → その上を走る車
道路が同じでも、走っている車は違うのです。
4. EtherNet/IPとは?
EtherNet/IPは、工場向けのネットワーク規格でODVAが管理しているオープンネットワークです。
PLCやリモートI/Oなどをリアルタイムで周期通信するための仕組みです。
【特徴】
・メーカーをまたいで接続可能
・I/Oデータの高速通信
・海外設備で主流
つまり、機器同士をつなぐための“共通ルール”です。
5. FINSとは?
FINSは、オムロンPLC専用の通信プロトコルです。
主な用途は、
・DMデータ読出し
・CIOエリア書込み
・PLC設定変更
など、オムロンPLCのメモリを読むための言語です。
6. MCプロトコルとは?
MCプロトコルは、三菱PLC専用の通信プロトコルです。
用途はFINS同様に、
・Dデータ読出し
・Mビット書込み
・生産実績収集
など、PLC内部メモリを直接読むための言語です。
7. MODBUS/TCPとは?
MODBUS/TCPは、汎用的なオープン通信プロトコルです。
MODBUS/TCPは、
・メーカーをまたいで使用可能
・レジスタ番号でデータをやり取り
という特徴があります。
計測機器やインバーター、電力監視装置などの接続によく使用されます。
8. それぞれの立ち位置整理
| 種類 | EtherNet/IP | FINS | MC | MODBUS/TCP |
|---|---|---|---|---|
| 分類 | ネットワーク規格 | 専用 | 専用 | 汎用 |
| メーカー依存 | 低い | 高い | 高い | 低い |
| 主用途 | I/O周期通信 | PLC読書き | PLC読書き | レジスタ通信 |
| Ethernet使用 | ○ | ○ | ○ | ○ |
重要なのは、すべてEthernetポートを使えるということです。
しかし中身はまったく違います。
9. なぜ混乱するのか?
理由はシンプルです。「Ethernet通信」という言葉が広すぎるからです。
Ethernetは単なる物理層であり、その上に
- EtherNet/IP
- FINS
- MC
- MODBUS/TCP
などが乗ります。
10. 現場での考え方
通信を整理する手順は次の通りです。
① 物理接続は?
→ Ethernetか?
ここでEthernetであっても決してEthernet/IPとは限りません。
② 何をしたい?
→ I/O制御?
→ PLCメモリ読書き?
→ 計測値取得?
③ 相手は同一メーカー?他社?
この順で考えると混乱しません。
11. まとめ
✔ Ethernetポートは「差し込み口」
✔ その上で動く通信は複数ある
✔ Ethernetポート=EtherNet/IPではない
それぞれの役割は次の通りです。
- EtherNet/IP → メーカー横断I/O通信
- FINS → オムロンPLC専用
- MCプロトコル → 三菱PLC専用
- MODBUS/TCP → 汎用レジスタ通信
通信を理解する第一歩は、「道路」と「車」を分けて考えることです。
これが整理できると、FA通信は一気に分かりやすくなります。

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